2021.12.08

【JH310】武家諸法度(元和令、寛永令、天和令)

■原典

・徳川禁令考

 


■史料

 

(1)元和令

一、文武弓馬の道、専ら相嗜むべき事。

  文を左にし武を右にするは、古の法也。兼備せざるべからず。…

一、法度に背く輩、国国に隠し置くべからざる事。…

一、国国大名、小名幷に諸給人、各相抱ふるの士卒、叛逆殺害人たるを告ぐる者有らば、速かに追ひ出すべき事。…

一、諸国の居城、修補を為す(1)と雖も必ず言上すべし。況んや新儀の構営(2)堅く停止せしむる事。…

一、私に婚姻を締ぶべからざる事。…

 

(2)寛永令

一、大名小名(3)在江戸(4)の交替相定むる所也。毎歳夏四月中、参勤(5)致すべし。従者の員数、近来甚だ多し。且つは国郡の費(6)、且つは人民の労也。向後は其の相応を以て之を減少すべし。但し、上洛の節は教令に任せ、公役は分限に随ふべき事。

一、五百石(7)以上の船、停止の事。

一、万事江戸の法度の如く、国国所所に於て之を遵行すべき事。…

 

(3)天和令

一、文武忠孝を励し、礼儀を正すべきこと、….(以下、略)…。

一、(略)…、五十以上十七歳以下の輩、末期(8)に及び養子致すと雖も、吟味の上之を定べし。…(略)…附、殉死(9)の儀、弥制禁せしむること。

 


■注釈

(1)修理すること。福島正則はこの条文に違反して改易となった。  (2)新しく築城すること。  (3)石高の少ない大名のこと。  (4)藩と江戸。  (5)参勤交代の制度確立はこの条文の成立による。ただし、関東在住の大名は半年に1回とされた。  (6)藩の負担のこと。  (7)米500石(現在で約75トンに相当する量)以上の積載が可能な船を指す。  (8)臨終の時のこと。  (9)主君の死に際して家臣が後を追って自害すること。

 


■現代語訳

(1)元和令

 一、(1615年)学問と文武に励むこと。文武両道は古からの法である。ともに備えていなかればならないものである。

 一、法度に背くものを国々に隠しおくことはしてはならない。

 

 一、国々の大名、小名並びに初給人、それぞれに仕えている士卒は叛逆殺害人であることを口にするものがいれば速やかに追い出すこと。

 一、居城を修理する場合でも、幕府に届け出ること。新しく城を築くことは禁止とする。

 一、私的に婚姻を結ぶことは禁止する。

 

(2)寛永令

 一、(1635年)参勤交代について定める。毎年四月中に参勤すること。最近は従者の数が非常に多い。これは藩で賄う費用とし、領民の負担ともなる。今後は身分相応に従者の数を減らすこと。

 一、米500石以上を積める船の建造を禁止する。

 一、全ての事柄について、江戸の法度の通り、それぞれの国でも順守すること。

 

(3)天和令

 一、(1638年)学問と武道、主君への忠義と父祖への孝行を奨励し、礼儀を正すこと。

 一、50歳以上の者や17歳以上の者が、臨終の時に養子届けを出した場合、吟味の上で決定する。…殉死は禁止とする。

 


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