【JH343】国学の発達
■原典
・うひ山ぶみ(本居宣長)
■史料
万葉集をよくまなぶべし。此書は、歌の集なるに、二典(1)の次に挙て、道をしるに甚だ益ありといふは、心得ぬことに、人おもふらめども、わが師(2)の大人の古学のをし(3)へ、専らここにあり、其の説に、古の道(4)をしらんとならば、まづいにしへの歌を学びて、古風の歌をよみ、次に古の文(5)を学びて、古ぶりの文をつくりて、古言をよく知りて、古事記日本紀(6)をよくよむべし。古言をしらでは、古意はしられず、古意をしらでは、古の道は知りがたかるべし。
■注釈
(1)古事記・日本書紀を指す。 (2)賀茂真淵のこと。 (3)「古道の教え」の意。 (4)「日本古代の精神の根源」の意。 (5)古典のこと。 (6)日本書紀のこと
■現代語訳
万葉集をよく学びなさい。これは歌集だが、古事記や日本書紀の次に、古道を知るのに有益である。納得しない人もいるだろうが、これは賀茂真淵先生の古道の教えである。先生は日本古代精神の根源を知るためには、まず昔の歌を学んで、昔風の歌を詠む。次に古典を学んで、昔風の文章を書き、古語をよく知って古事記や日本書紀を学ぶべきであるという。古語を知らなければ古い文章の意味がわからず、意味がわからなければ古道を知ることはできない。