【JH339】人返しの法(天保の改革)
■原典
・牧民金鑑
・幕末御触書集成
■史料
①牧民金鑑
一、在方(1)のもの身上相仕舞ひ(2)、江戸人別ニ入り候儀、自今以後決して相成らず…
一、近年御府内(3)え入り込み、裏店(4)等借り請け居り候者の内ニハ、妻子等もこれなく一期住(5)同様のものもこれあるべし。左様の類ハ早早村方え呼び戻し申すべき事。…
②幕末御触書集成
諸国人別改方(6)の儀、此度仰せ出され候に付いては、自今以後、在方のもの身上相仕舞い、江戸人別に入候儀決して相成らず候間、領分知行所役場(7)等に罷在候家来より、精々勧農の儀申諭、成る丈人別減らざる様取り計、且職分に付、当分出稼のもの并奉公稼ぎに出府(8)致し候もの共は、村役人共連印の願書差し出させ、右願の趣、承り届候旨、…(中略)…在所に罷在り候家来へ精々申し付くべく候。…
在方のもの当地え出居馴れ候に随ひ、…(中略)…商売等相始め、妻子等持候ものも、一般に差し戻しに相成候ては、難渋致すべき筋に付、格別の御仁恵を以て、是迄年来人別に加り候分は、帰郷の御沙汰(9)には及ばれず、以後取り締まり方左の通り仰せ出され候。
■注釈
(1)農村のこと。 (2)「所帯をたたむ」の意。 (3)江戸のこと。 (4)粗末な貸家のこと。 (5)1年契約の奉公人のこと。 (6)諸国の戸口調査のこと。 (7)大名・旗本の代官所・陣屋を指す。 (8)江戸に出ること。 (9)「命令」の意。
■現代語訳
①牧民金鑑
一、 (1843年)農村に住む者が財産を処理して、江戸の人別帳に入ることは今後厳禁とする。
一、江戸に入り、裏長屋などを借りて住む者の中には、妻や子どももなく、一年契約の奉公人同様の者もいる。このような者は、すぐに農村へ呼び戻すこと。
②幕末御触書集成
諸国の戸口調査について、この度以下のような内容が申し渡された。
これより以後、農村の者が所帯をたたんで江戸の戸籍に入ることは禁止とする。大名・旗本の代官所や陣屋などに務めている役人から、農民は農業に励むよう申し諭し、できるだけ農村の人口を減らさないように取り計らい、かつ目下出稼ぎや奉公のために江戸に出て職を得ている者については村役人などと連印の願書を差し出させ、右の願いの内容を届け…農村の役人に申しつけるようにすること。
…農村のものが江戸に出て慣れるのに従って、…商売等をはじめ、妻子などを持っている者も、同じように帰農させるのは難渋するであろうから、格別のお取り計らいによって、これまで江戸の戸籍に加わっていた者については、帰郷の命令に従わなくてよいこととする。…