2021.12.08

【JH336】異国船打払令(無二念打払令)

■原典

・御触書天保集成




■史料

文政8酉(1825)年2月(1)

 

 異国船渡来の節取計方(2)、前前従り数度仰せ出され之有り、をろしや船の儀に付ては、文化の度改て相触れ候(3)次第も候処、いきりすの船先年長崎に於て狼藉に及び(4)、…追追横行の振舞、其の上邪宗門(5)に勧め入れ候致方も相聞へ、旁捨て置かれ難き事ニ候。

 

 一体いきりすニ限らず、南蛮・西洋の儀は、御制禁邪教の国ニ候間、以来何れの浦方(6)ニおゐても、異国船乗り寄せ候を見受け候ハバ、其の所ニ有り合わせ候人夫を以て、有無に及ばず、一図(7)ニ打ち払ひ、逃げ延び候ハバ、追船等差し出すに及ばず、其の分ニ差し置き、若し押て上陸致し候ハバ、搦め捕り、又は打ち留め候ても苦しからず候。

 

 …御察度(8)は之有る間敷候間、二念無く(9)、打払を心掛け、図を失はざるよう(10)取り計らひ候処、専要の事に候条、油断無く申し付けらるべく候。…




■注釈

(1)1825年。  (2)「取り扱う方法」の意。  (3)文化3(1806)年の薪水給与令を指す。  (4)文化5(1808)年のフェートン号事件を指す。  (5)キリスト教のこと。  (6)海辺の町のこと。  (7)「直ちに」の意。  (8)「詳しく取り調べて処罰する」の意。  (9)「「ためらうことなく」の意。  (10)「機を失わない」の意。




■現代語訳

文政8(1825)年2月

 

 外国船が渡来してきた時の扱い方については、以前から数回にわたって命じられている。ロシア船の事については、文化3(1806)年に改めてお触れを出したことがあったが、イギリスの船(フェートン号)が先年(文化5(1808)年)長崎において乱暴をし、…(中略)…その上、キリスト教に入信を進めるようなこともあったと判明し、いずれにしても放置できないことである。

 

 大体イギリスに限らず、南蛮西洋の国々は日本で禁じているキリスト教国であるから、今後はどこの港においても外国船が入港したことを発見したならば、その場に居合わせた人々をもって有無を言わず、直ちに打払い、逃亡した場合は追跡船を出す必要はなく、そのままにしておいて良いが、もし強行に上陸したならば逮捕し、または打ち殺しても差し支えない。

 

 …詳しい取り調べはしないので、迷うことなく打ち払うことを考え、時機を逃さないように処置することが大切であり、油断のないように申しつけておく。




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