【JH334】囲い米の制・棄捐令
■原典
・御触書天保集成
■史料
① 囲米の制
近年御物入相重り候うえ、凶作等打ち続き、御手当御救筋、莫大に及び候に付き、おいおい御倹約の儀仰せ出され候えども、天下の御備御手薄ニこれあり候ひては相済まざる儀ニ思し召し候。
これにより享保の御例を以て、上納米も仰せ付けらるべく候えども、当時不如意多きの儀、かつ凶作等ニて難渋の砌ニも候えば、御沙汰に及ばされず候。
…高壱万石ニ付き五十石の割合を以て、来る戌年より寅年迄五ケ年の間、面面領邑ニ囲穀いたし候ようニ仰せ出され候。
② 棄捐令
このたび、御蔵米取(1)御旗本・御家人(2)、勝手向(3)御救ひのため、蔵宿(4)借金仕法の御改正を仰せ出され候こと。
一、御旗本・御家人蔵宿どもより借入金利足の儀は、向後金壱両ニ付き銀六分宛の積り、利下ゲ申し渡し候間、借り方の儀ハこれまでの通り蔵宿と相対(5)致すべきこと。
一、旧来の借金は勿論、六ケ年以前辰年(6)までニ借請け候金子は、古借新借の差別無く、棄捐の積り相心得べきこと。…
■注釈
(1)幕領の年貢の中から俸禄の米を支給される者のこと。 (2)将軍直属の家臣。旗本は将軍に直接謁見できるが、御家人はその対象ではない。 (3)「生計」の意。 (4)札差のこと。 (5)「直接交渉」の意。 (6)天明4(1784)年を指す。
■現代語訳
① 囲い米(※省略)
② 棄捐令
この度、幕府から切米を支給されている旗本・御家人の生活を救済するために札差からの借金の方法の改正を仰せ出される。
一、御旗本・御家人が、札差から新たに借りる借金の月利は、今後元金一両につき銀0.6匁(当時の金銀相場で約1%の月利)とし、利子下げを命じるから、借金の方法はこれまでの通り、札差と話し合いですること。…
一、昔からの借金はもちろん、6年以前の天明4(1784)年までの借金は、古い借金、新しい借金の区別なく、債券の放棄を命じるから、そのように心得るように。…