2024.06.26

【JH332】大名の窮乏

■原典

・経済拾遺録




■史料

 問

 近来諸侯大小ト無ク、国用不足(1)シテ貧困スルコト甚シ。家臣の俸禄を借ルコト、少キハ十分ノ一、多キハ十分ノ五六ナリ。ソレニテ足ラザレバ、国民ヨリ金(2)ヲ出サシメテ急ヲ救フ。

 猶足ラザレバ、江戸・京・大坂ノ富商人大賈(3)ノ金ヲ借ルコト、年年ニ已ズ。借ルノミニテ還スコト罕(まれ)ナレバ、子又子ヲ生テ(4)、宿債(5)(フルキオヒモノ)増多スルコト幾倍トイフコトヲ知ラズ。




■注釈

(1)「藩の経費が不足している」の意。  (2)御用金や献金のこと。  (3)大商人のこと。  (4)子は利子のことで、「利子に利子がつく」ということ。  (5)以前からたまっていた債務のこと。




■現代語訳

 近頃、大名は皆藩の経費が不足し、生活に困っている。家臣の俸禄を、1割〜5・6割借り上げているほどである。それでも足りない場合には、領民に御用金や献金を課して急場をしのいでいる。

 さらに足らなければ江戸・京・大坂の大商人から借金をする。借りるばかりなので利子が利子を生み、債務の増加が、何倍になっているのか分からないほどである。




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