【JH327】上げ米の制
■原典
・御触書寛保集成
■史料
御旗本(1)ニ召し置かれ候御家人、御代代段段相増し(2)候。御蔵入(3)高も先規よりハ多く候えども、御切米御扶持方(4)、其の外表立ち候御用筋渡方ニ引き合ひ候ては、畢竟年年不足の事ニ候。
…今年ニ至りて御切米等も相渡し難く、御仕置筋の御用も御手支の事ニ候。それニ付き、御代代御沙汰之無き事ニ候えども、万石以上(5)の面面より八木(6)差し上げ候様ニ仰せ付けらるべしと思し召し、左候ハねば御家人の内、数百人御扶持を召し放さるべきより外は之無く候故、御恥辱を顧みられず、仰せ出され候。高壱万石ニ付き八木百石積り差し上げらるべく候。…之に依りて在江戸半年(7)充御免成され候間、緩緩休息いたし候様ニ仰せ出され候。
■注釈
(1)将軍直属の旗本及び御家人をさす。 (2)綱吉・家宣・吉宗の藩主時代の旧臣を、旗本や御家人に登用したために増加した。 (3)幕領からの年貢収入のこと。 (4)「知行地を持たない旗本や御家人に支給する」の意。 (5)大名のこと。 (6)米のこと。二文字を合わせると「米」という文字になる。 (7)「参勤交代による在府を、半年間短縮」の意。
■現代語訳
(1722年)旗本や御家人の数は段々と増加してきた。幕府の年貢収入は以前よりも増加しているが、切米(きりまい)や扶持米(ふちまい)、行政費といった支出が増加して年々不足してきている。
今年は切米などの支給も困難となり、行政費にも支障が出てきた。そこで代々の将軍は命じなかったが、一万石以上の大名から米を幕府に差し出させようと将軍はお考えになった。そうしないと、旗本や御家人のうち、数百人をやめさせるしかなく、恥を忍んで命じられたのである。
高一万石に米百石お割合で納入すること。その代わりに、参勤交代の江戸在府を半年短縮するので、ゆっくり休息するようにとご命令があった。