2021.12.08

【JH307】刀狩令

■原典

・小早川家文書




■史料

 一、諸国百姓、刀、脇指、弓、やり、てつはう、其の外武具のたぐひ所持候事、堅く御停止候。其の子細(1)は、入らざる道具をあひたくはへ、年貢所当(2)を難渋せしめ、自然一揆を企て、給人にたいし非儀の動(3)をなすやから、勿論御成敗有るべし。然れば、其の所の田畠不作せしめ、知行ついえになり候の間、其の国主、給人、代官として、右武具ことごとく取りあつめ進上致すべき事。

 

 一、右取をかるべき刀、脇指、ついえにさせらるべき儀にあらず候の間、今度大仏御建立(4)の釘かすがひに仰せ付けらるべし。然れば、今生の儀は申すに及ばず、来世までも百姓たすかる儀に候事。

 

 一、百姓は農具さへもち、耕作専らに仕り候へバ、子子孫孫まで長久に候。百姓御あはれみをもつて、此の如くに仰せ出され候。誠に国土安全万民快楽の基也。…此の旨を守り、各其の趣を存知し、百姓は農桑に精を入るべき事。

 

 右、道具急度取り集め、進上有るべく候也。

 

  天正十六年(5)七月八日 (秀吉朱印)




■注釈

(1)「その理由」の意。 (2)年貢やそれ以外の諸税のこと。  (3)道理に背く行為のこと。  (4)京都方広寺の大仏殿建立のこと。  (5)1588年のこと。




■現代語訳

 一、諸国の百姓たちが刀・脇差・弓・槍・鉄砲その外武具の類を持つことをかたく禁止する。その理由は、不必要な武器を所有し、年貢・所当を出し渋り、一揆を起こし、もし給人に対して非道な振る舞いをした輩があれば、もちろん処罰されるのであるから、そうなればその所の田畑は耕作されず、その土地から年貢があがらなくなるからである。その土地の領主、給人あるいは代官などの責任において以上のような武具を全部集めて差し出すようにせよ。

 

 一、右の没収される刀や脇差は無駄にされるのではなく、今度、大仏建立にあたって釘やかすがいとして用いようと思う。そうすれば、現世はいうまでもなく、来世までも百姓は救済されるであろう。

 

 一、百姓は農具さえ持って耕作に専念していれば、子々孫々まで繁栄していくだろう。百姓への憐れみを持ってこのように命じるのである。これが国土安全万民快楽の基である。それぞれこの命を守り、その趣旨を理解し、百姓は農業に農業に精を出す事。

 右の通り、必ず武具を取り集めて進上すべきこと。

  天正十六年(1588年)七月八日 (秀吉朱印)




← 前の投稿に戻る

   

   

次の投稿に進む →

   

   

>> 一覧に戻る <<