【JH219】日明貿易
■原典
・善隣国宝記
■史料
・足利義満の国書
日本の准三后某(1)、書を大明皇帝陛下に上る。日本国開闢以来、聘問(2)を上邦(3)に通ぜざる無し。某幸に国鈞(4)を秉り、海内虞無し。特に往古の規法(5)に遵ひて、而して肥富(6)をして祖阿(7)に相副へて、好を通じて方物(8)を献ぜしむ。金千両、馬十匹、薄様千帖、扇百本、屏風三双、鎧一領、筒丸一領、劔十腰、刀一柄、硯筥一合、同文台一箇。海島に漂寄(9)の者の幾許人を捜り尋ねて、之を還す。
某誠惶誠恐、頓首頓首謹言。
・明の国書
茲(ここに)爾( なんじ)、日本国王源道義(10)、心王室(11)に存し、君を愛するの誠を懐(いだ)き、波濤を踰越し、使(12)を遣して来朝し、逋流(13)の人を帰し、…朕(14)甚だ嘉す。…今使者道彜(どうい)・一如を遣し、大統暦(15)を班示し正朔を奉ぜしめ(16)、…至らば領すべきなり。…
■注釈
(1)太皇太后、皇太后、皇后に準ずる地位の足利義満。 (2)挨拶の使者。 (3)「あなたの国」という意味で、ここでは明のこと。 (4)「国家を統治する」の意。 (5)古いしきたりの意味で、ここでは「遣唐使のしきたり」のこと。 (6)博多の豪商肥富のこと。 (7)側近の僧祖阿のこと。 (8)日本の産物のこと。(9)漂流者のこと。
(10)足利義満のこと。 (11)明の王室のこと。 (12)祖阿と肥富のこと。 (13)漂流者のこと。 (14)明の二代皇帝、建文帝のこと。 (15)明の暦 (16)「大統暦を使用させる」の意味で、暗に「明に従属させる」ことを意味する。
■現代語訳(口語訳)
1401年、准三后の足利義満が国書を大明皇帝陛下に差し上げます。。日本が始まって以来、使者を貴国に遣わさなかったことはありません。私は幸いにも国家を統治し、国内に不安はありません。遣唐使のしきたりに従って祖阿を商人肥富に同行させて派遣し、友好を結ぶしるしに日本の産物として、金千両、馬十匹、上質の鳥の子紙千帖、扇百本、屏風三双、鎧一領、筒丸一領、剣十腰、刀一柄、硯箱一合、文机一箇を献上します。また、日本に漂着した人々を探し求め、若干人をお返しいたします。道義は、心から畏れ謹み、敬意を表して申し上げます。
1402年、日本国王源道義は明の皇帝を敬う気持ちがあり、使者を派遣して、漂流者を送り届けてきた。私(建文帝)はとても嬉しい。使者の道彜と一如を派遣して明の暦を授けるので使用すること。