【JH206】新補率法の地頭
■原典
・新編追加
■史料
去去年兵乱(1)以後、諸国庄園郷保(2)に補せらるる所の地頭(3)、沙汰の条条
一、得分(4)の事
右、宣旨(5)の状の如くんば、仮令、田畠各拾一町の内、十町は領家国司の分、一丁は地頭の分、広博狭小を嫌はず、此の率法を以て免給するの上、加徴(6)は段別に五升を充て行なはるべしと云云。尤も以て神妙なり。但し此の中、本より将軍家の御下知を帯し、地頭たる輩の跡、没収の職として改補せらるるの所所に於ては、得分縦ひ減少す(7)と雖も、今更加増の限にあらず。是旧儀に依るべきの故也。加之、新補の中、本司(8)の跡、得分尋常(9)の地に至りては、又以て成敗に及ばず。只、得分無き所所を勘注し、宣下の旨を守り、計ひ充てしむべき也。
貞応二年七月六日 前陸奥守(10) 判
相模守殿(11)
■注釈
(1)承久の乱のこと。 (2)公領の単位を指す。 (3)新補地頭のこと。
(4)地頭に配分された収益のこと。 (5)太政官布にかわる文書形式で官宣旨のこと。
(6)租税への付加徴収のこと。
(7)「従来の地頭の収益率が新補地頭の収益率の基準を下回っても」の意。
(8)地頭が任命される以前にいた荘官のこと。 (9)「世間一般の水準」の意。
(10)執権北条時房のこと。 (11)六波羅探題北条時房のこと。
■現代語訳(口語訳)
一昨年の兵乱以後、諸国の荘園と公領の郷・保に任命された地頭についての裁定の事ども
一、地頭の収益について
これについては宣旨の内容によると、例えば田畑各11町のうち、10町は領家や国司の取り分で、1町は地頭の取り分とし、面積の大小関わらず、この比率で給田を地頭に与えた上、課徴米として田畑1段につき5升を割り当てて支給するとのことであった。まことに立派な裁定である。