【JH205】承久の乱2
■原典
・神皇正統記
■史料
北畠親房の承久の乱論
次ニ王者ノ軍ト云ハ、トガアルヲ討ジテ、キズナキヲバホロボサズ。頼朝高官ニノボリ、守護ノ職ヲ給、コレミナ法皇(1)ノ勅裁也。ワタクシニヌスメリトハサダメガタシ。後室(2)ソノ跡ヲハカラヒ、義時久ク彼ガ権ヲトリテ、人望ニソムカザリシカバ、下ニハイマダキズ有トイフベカラズ。一往ノイハレバカリニテ追討セラレンハ、上ノ御トガ(3)トヤ申ベキ。謀叛オコシタル朝敵ノ利ヲ得タルニハ比量セラレガタシ。カカレバ時ノイタラズ、天ノユルサヌコトハウタガヒナシ。
■注釈
(1)義白河法皇のこと。 (2)北条政子のこと。 (3)「後鳥羽上皇の罪」の意。
■現代語訳(口語訳)
王者の戰とは、罪のあるものだけを討って、罪のないものは滅ぼさないものである。源頼朝が高官にのぼり、守護の職を得たのもご白河法皇の裁断である。自分勝手に奪ったものとはいえない。北条政子が後を継ぎ、北条義時は執権となるが、人望に背いていらず罪があるとはいえない。源氏が三代で途切れたという理由で義時を追討するのは、後鳥羽上皇の罪である。謀叛を起こした朝敵が勝利した例とは比較できないものである。そうであれば、機は熱しておらず、天も許さぬことであったのは疑いないことである。