2021.11.16

【JH203】守護・地頭の設置

■原典

・吾妻鏡

・玉葉




■史料

① 守護・地頭の設置〔吾妻鏡〕

(文治元年十一月)十二日辛卯、…凡そ今度の次第、関東(1)の重事たるの間、沙汰の篇、始終の趣(2)、太だ思食し煩ふの処、因幡前司広元(3)申して云ふ。世已に澆季、梟悪の者尤も秋を得たる也。天下に反逆の輩有るの条、更に断絶すべからず。而るに、東海道の内に於ては御居所たるに依て、静謐せしむと雖も、奸濫定めて他方に起らん歟。之を相鎮めんが為、毎度東士を発遣せらるるは、人人の煩也。国の費也。此の次を以て、諸国に御沙汰を交へ、国衙庄園毎に、守護地頭を補せらるれば、強ち怖るる所有るべからず。早く申し請けしめ給ふべしと云云。二品(4)殊に甘心し、此儀を以て治定す。

 諸国平均に守護地頭を補任し、権門勢下庄公(5)を論ぜず、兵糧米(6)(段別五升)を宛て課すべきの由、今夜、北条殿(7)、藤中納言経房卿(8)に謁し申すと云々。




② 守護・地頭の設置〔玉葉〕

 廿八日(丁未)、…又聞く、件の北条丸以下郎従等、相分ちて五畿・山陰・山陽・南海・西海の諸国を賜はり、庄公を論ぜず、兵粮(段別五升)を宛て催す(9)べし。啻に兵粮の催しのみにあらず、惣じて以て田地を知行(10)すべしと云云。凡そ言語の及ぶ所にあらず。




■注釈

(1)鎌倉幕府のこと。  (2)「前後の有様」の意。  (3)大江広元のこと。

(4)源頼朝のこと。  (5)「荘園・公領を問わず」の意。  (6)荘園や公領に課す米

(7)北条時政のこと。  (8)藤原経房のこと。  (9)「徴収する」の意。

(10)「土地を支配する」の意。




■現代語訳(口語訳)

① 守護・地頭の設置〔吾妻鏡〕

 1185年、この度の事は鎌倉幕府にとって重大なことで、頼朝は対策に苦慮していた。大江広元は「諸国に命じて、公領や荘園ごとに守護と地頭を任命すれば心配することはありません。…(中略)…早く朝廷に申請してください」と進言した。頼朝は関心して、このように決定した。

 諸国に守護・地頭を任命し、権勢の盛んな貴族・寺社の荘園や公領を問わず、兵粮米段別五升を課税するようにと、今夜北条時政が藤原経房に申し入れた。


② 守護・地頭の設置〔玉葉〕

 1185年、また聞くには例の北条時政以下の従者たちが、それぞれ五畿・山陰・山陽・南海・西海の諸国を賜り、荘園・公領を問わず兵粮米を徴収するだけでなく、土地の支配も行うということである。全く言語道断である。





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