2021.12.08

【JH337】天保の薪水給与令

■原典

・徳川禁令考




■史料

 異国船渡来の節、二念無く打ち払ひ申すべき旨、文政八年仰せ出され候(1)。然ル処、当時万事御改正にて、享保寛政の御政事ニ復せられ(2)、何事ニよらず御仁政を施され度との有難き思し召しニ候。

 

 右ニ付ては、外国のものニても、難風に 逢ひ漂流ニて食物薪水を乞ひ候迄ニ渡り来り候を、其の事情相分からざるニ、一図ニ打ち払ひ候てハ、万国に対せられ候御所置とも思し召されず候。

 

 之に依り、文化三年(3)異国船渡来の節取計方(4)の儀ニ付仰せ出され候趣、相復し候様仰せ出され候間、異国船と見受け候ハバ、得と様子相糺(5)し、食料薪水等乏しく帰帆(6)成り難き趣候ハバ望の品(7)相応ニ与へ、帰帆致すべき旨申し諭せ。尤も上陸ハ致させ間敷候。




■注釈

(1)1825(文政8)年の異国船打払令を指す。  (2)天保の改革の理想のこと。  (3)1806年。(4)「取り扱い方法」の意。  (5)「よく調べる」の意。  (6)「帰国」の意。  (7)「希望する品」の意。




■現代語訳

 外国船が渡来してきたとき、迷うことなく打ち払いを行うべきことを文政8年に命じられた。ところが、現在では全てを改正する天保の改革を実施中で、享保・寛政の政治にもどされて仁政を行いたいとのありがたいお考えである。

 

 この事について、外国船であっても暴風にあい、漂流などして食料や薪水を求めるために渡来した場合、事情の分からないまま、ひたすら打ち払ってしまっては、全ての外国に対する適当な処置とはいえないとお考えになった。

 

 こういうわけで、外国船が渡来した場合、その取り扱いについては文化3年の法令に戻すよう命じられたので、外国船と見受けたならば、念入りに事情を調べ、食料・薪水などが不足して帰国しにくい事情があれば、望みの物資を適当に与え、帰国するように話し聞かせるようにせよ。ただし、上陸させてはならない。




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