・官報(明治23年10月31日付)
朕惟フニ我ガ皇祖皇宗(1)国ヲ肇ムルコト宏遠ニ徳ヲ樹ツルコト深厚ナリ。我ガ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆(2)心ヲ一ニシテ世世厥ノ美ヲ済セルハ此レ我ガ国体ノ精華(3)ニシテ、教育ノ淵源亦実ニ此ニ存ス(4)。
爾臣民、父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信ジ恭倹己レヲ持シ博愛衆ニ及ボシ、学ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓発シ徳器ヲ成就シ、進デ公益ヲ広メ世務ヲ開キ、常ニ国憲ヲ重ジ国法ニ遵ヒ、一旦緩急アレバ義勇公ニ奉ジ以テ天壌無窮ノ皇運(4)ヲ扶翼スベシ。…
是ノ如キハ独リ朕ガ忠良ノ臣民タルノミナラズ、又以テ爾祖先ノ遺風ヲ顕彰スルニ足ラン。斯ノ道ハ実ニ我ガ皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ子孫臣民ノ倶ニ遵守スベキ所、之ヲ古今ニ通ジテ謬ラズ、之ヲ中外ニ施シテ悖ラズ、朕爾臣民ト倶ニ拳拳服膺シテ咸其の徳ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ。
明治二十三年十月三十日
御名 御璽
(1)天照大神と歴代の天皇(天皇の祖先)を指す。 (2)「国民」を指す。 (3)「国柄のすぐれて美しい」の意。 (4)「皇室の運命」の意。
朕(明治天皇)が思うには天照大神以下の我が祖先は、遠い昔に国を始め、代々の天皇の御徳は深く厚いものである。我が臣民もよく忠孝につとめ、全ての国民が心を1つにして、これまでの忠孝の美徳をはっきしてきたのは日本の国柄の最も優れたところであり、教育の根源も実にここにある。
臣民は父母の孝を尽くし、兄弟は仲良くし、夫婦は強調し、友達は信じ合い、人にはうやうやしく、自分には慎み深い態度を持ち、誰彼となく広く人々を愛し、世の中のつとめに励み、常に憲法を重んじ法律を守り、いったん国家に危険が迫ってくれば忠義と勇気を以て国のために働き、天地と共にきわまりない皇室の運命を助けるようにしなければならない。