2024.12.02

【JH513】国際連盟脱退の通告文

■原典

・日本外交年表竝主要文書




■史料

 

 本年二月二十四日臨時総会の採択せる報告書(1)は、帝国が東洋の平和を確保せんとするほか、何等異図なきの精神を顧みざると同時に、事実の認定及びこれに基く論断に於いてはなはだしき誤謬に陥り、なかんずく九月十八日事件(2)当時及び其の後に於ける日本軍の行動を以て、自衛権の発動に非ずと臆断し、又同事件前の緊張状態(3)及び事件後に於ける事態の悪化が支那側の全責任に属ずるを看過し、ために東洋の政局に新たなる紛糾の因を作れる一方、満州国成立の真相を無視し且つ同国を承認せる帝国の立場を否認し、東洋に於ける事態安定の基礎を破壊せんとするものなり…

 

 伋って帝国政府は此の上、連盟と協力するの余地なきを信じ、連盟規約第一条三項(4)に基づき帝国が国際連盟より脱退することを通告するものなり。




■注釈

(1)1933年に国際連盟臨時総会に提出された対日勧告案のこと。  (2)1931年の柳条湖事件のこと。  (3)以前に、中国が満鉄並行線計画を進めたことや1931年の長春近郊での万宝事件、また中村大尉が中国軍に殺害された事件などを指す。  (4)2年の予告を以て連盟から脱退できるとある。日本は在籍したが、実際の活動はなかった。




■現代語訳

 

 今年の二月二十四日の国際連盟臨時総会での報告書は、日本の意図が東洋の平和の確保のみであることを考えず、また事実認識や判断に大きな誤りを犯している。特に九月十八日の事件(柳条湖事件)の際の日本軍の行動を自衛ではないと根拠なく判断し、またそれ以前以後の日中間の全責任が中国にあることを見逃し、東洋の政局に新たな混乱の原因を作っている。一方、満州国成立の真相を無視し、同国を認めた日本の立場を認めず、東洋の事態安定の基礎を破壊しようとしている。…

 

 日本政府は、これ以上連盟と協力する余地がないと判断し、連盟規約により日本が国際連盟を脱退することを通告する。




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