【JH505】石橋湛山の演説
■原典
・石橋湛山全集
■史料
青島陥落(1)が吾輩の予想より遥かに早かりしは、同時に戦争の不幸の亦た意外に少なかりし意味に於いて、国民と共に深く喜ぶ処なり。然れども、かくて我が軍の手に帰せる青島は、結局如何に処分するを以て、最も得策となすべきか。
是れ実に最も熟慮を要する問題なり。此問題に対する吾輩の立場は明白なり。亜細亜大陸に領土を拡張すべからず、満洲も宜く早きに迨んで之れを放棄すべし、とは是れ吾輩の宿論なり。
更に新たに支那山東省の一角に領土を獲得する如きは、害悪に害悪を重ね、危険に危険を加うるもの、断じて反対せざるを得ざる所なり。
■注釈
(1)1914年9月2日に、日本軍が山東半島に出兵し、青島にあったドイツの軍港と要塞を攻撃した。のち、11月7日にこれを占領した。
■現代語訳
青島陥落が私の予想よりはるかに早かったのは、同時に戦争の不幸がまた意外に少なかったという意味で、国民とともに深く喜ぶところである。しかし、こうして我が軍の手に入った青島は、結局どのようにするのがもっとも得策とすべきであろうか。
これは実に最も熟慮を要する問題である。この問題に対する私の立場は明確である。「アジア大陸に領土を拡張すべきではない」「満州もできるだけ早く放棄すべきである」というのは私のかねてからの持論である。
さらに新たに中国の山東省の一角に領土を獲得するようなことは、害悪に害悪を重ね、危険に危険を加えるものであって、断じて反対せざるを得ない。