【JH502】尾崎行雄の内閣弾劾演説
■原典
・帝国議会衆議院議事速記録
■史料
彼ら(1)は常に口を開けば直に忠愛を唱へ、恰も忠君愛国は自分の一手専売の如く唱へてありまするが、其為すところを見れば、常に玉座(2)の影に隠れて、政敵を狙撃するが如き挙動を執っているのである(拍手起る)。
彼らは、玉座を以て胸壁(3)となし、詔勅(4)を以て弾丸に代へて政敵を倒さんとするものではないか。此の如きことをすればこそ、身既に内府(5)に入って、未だ何をも為さざるに当りて、既に天下の物情騒然としてなかなか静まらない。
…又、其内閣総理大臣の地位に立って、然る後政党の組織に著手する(6)と云うがごときも、彼の一輩が如何に我が憲法を軽く視、其の精神のあるところを理解せないかの一班が分かる。
■注釈
(1)第三次桂太郎内閣を中心とする軍閥・官僚のこと。 (2)天皇の御座所のこと。ここでは「天皇の権威」を指す。 (3)弾丸よけ積土、とりでのこと。 (4)詔書と勅語のこと。天皇の意思を伝えるための公的文書。桂は留任を断る斎藤実海相を詔勅によって留任させたりした。 (5)内大臣のこと。 (6)桂は組閣後に立憲同志会という新党の結成準備を始めた。
■現代語訳
彼らは口を開けばすぐに忠愛を語り、忠君愛国を自分の一手専売のように唱えているけども、その行いを見れば、常に天皇の陰に隠れ、政敵を狙撃するような行動をとっている。
彼らは天皇の玉座でとりでとし、詔勅を弾丸にかえて政敵を倒そうとする者である。桂太郎は内大臣となったが、何も行わないので世情はなかなか静まらない。
…また首相となってから新党を結成するも、桂が憲法を軽視してその精神を理解していないことを示す者である。