【JH501】第3次桂太郎内閣の決意表明
■原典
・桂太郎関係文書
■史料
今回太郎聖意ヲ奉シ内閣ヲ組織シ、今日諸君ト共ニ大命ヲ拝セリ。
…而シテ今ヤ内閣更迭ニ関シ世論動モスレハ紛起(1)シ、…抑立憲ノ要義ニ於テ、内閣大臣輔弼ノ責任(2)ハ瞭々火ヲ見ルカノ如ク一毫其疑イヲ在セスト雖モ、従来ノ慣行或イハ政事ヲ閣外ノ元勲(3)ニ私議シ、殆後進カ先輩ニ対スル一ツノ礼譲視スルノ観ヲ呈シ、随テ一面ハ元勲ニ累ヲ嫁スルノ嫌ヲ生シ、一面ハ閣臣タル自家ノ本領ヲ忘ルルガ如キモノアリ。
由来国家又ハ個人ニシテ功臣元勲ニ優礼尊重ヲ為スハ其道別ニ存セリ。今日時世ノ進運ニ於テ豈如此ノ習慣ヲ継続スルヲ得へケンヤ。
故ニ太郎就任ノ初ニ於テ深之ヲ鑑ミ此ノ微衷(4)ヲ元勲諸氏ノ聡明ニ訴ヘシニ、深ク之ヲ諒トシ、将来ハ閣臣進テ此弊ヲ廃スヘシ、元勲モ亦之ヲ喜テ之をヲ避クヘキヲ以テ互ニ誓言セリ。
■注釈
(1)第一次護憲運動を指す。 (2)国務大臣は天皇に対して責任を負うことを指す。 (3)元老のこと。 (4)本心、真心のこと。
■現代語訳
この度、私桂太郎が陛下の意を封じて内閣を組織し、今日諸君と共に大命を受けた。
しかし、今内閣を辞めさせようとする世論が起こっている。そもそも立憲政治の要点は、各国務大臣が天皇を助け、その責任を負うことである。しかし、従来は閣外の元老に政治について意見を聞いており、後輩の先輩に対する態度であるかのようだった。政治の責任を元老に負わせる面もあり、国務大臣が自分のするべきことを忘れているかのようでもある。
元来、国家または個人が元老に対して礼を尽くし、尊重する方法は別にある。今日時世が進んでいる中で、こうした習慣を継続することはできない。
よって私は組閣に際し、私の心を元老に訴えた。元老らによく理解してもらい、将来において国務大臣はこれらの弊害を排して、元老もそれに協力しようと互いに誓い合った。