【JH438】内村鑑三の非戦論
■原典
・『万朝報』(明治三十六(1903)年六月三十日)
■史料
余(1)は日露非開戦論者である許りではない。戦争絶対的廃止論者である。戦争ハ人を殺すことである。爾うして人を殺すことハ大罪悪である。…
若し世に大愚の極(2)と称すべきものがあれバ、それは剣を以て国連の進歩を計らんとすることである。…
余の戦争廃止論が直に行はれやうとハ、余と雖も望まない。しかしながら戦争廃止論ハ、今や文明国の識者(3)の輿論となりつつある。…
■注釈
(1)「私」の意。 (2)「最も愚かなこと」の意。 (3)有識者のこと。
■現代語訳
私は日本とロシアの戦争開始に反対しているだけではない。戦争そのものの絶対的反対論者なのである。戦争は人を殺すことである。そうして人を殺すことは、大いなる罪であり、大いなる悪である。…
もし、この世に最も愚かなことの究極と呼ぶべきものがあるならば、それは武力によって国の発展をしようとすることである。…
私の戦争廃止論がすぐに実現されるとは、私であっても望まない。しかしながら、戦争反対論は今や文明国の有識者の考えになりつつある。