【JH434】山県有朋首相の演説(第一議会、利益線の確保)
■原典
・『山県有朋意見書』
■史料
予算中に就きまして、最歳出の大部分を占めるものは、すなわち陸海軍の経費で御座います。…
蓋し国家独立自衛の道に二途あり。第一に主権線(1)を守禦すること、第二には利益戦を保護することである。其の主権線とは国の疆域を謂ひ、利益線とは其の主権線の安危に密着の関係ある区域を申したるのである。凡そ国として主権線及び利益線を保たぬ国は御座りませぬ。方今列国の間に介立して一国の独立を維持するには、独主権線を守禦するのみ似ては決して十分とは申されませぬ。必ず又利益線を保護致さなくてはならぬことと存じます。
■注釈
(1)ここでは「朝鮮半島」を指す。 (2)「境界」のこと。 (3)「現在」の意。 (4)「並び立って」の意。
■現代語訳
予算の中で歳出の最も大きな部分を占めるのは陸海軍の経費でございます。…
思うに国家が独立自衛を維持するためには1つの方法があり、1つは主権線を守り切ること。もう1つは利益線を維持することでありましょう。その主権線とは国境線の内側のことを指し、利益線とは国境線の安危に密接に関わる地域のことを指します。およそ国として主権線、または利益線を保っていない国はありません。まさに、今、列強諸国と並びたち、一国の独立を保ためには、ただ国境線ばかりを守っていたのでは十分ではなく、必ず利益線を維持しなくてはならないと考えております。