【JH421】民撰議院設立の建白書
■原典
・自由党史 / 日新真事誌
■史料
臣等(1)伏して方今政権の帰する所を察するに、上、帝室に在らず、下、人民に在らず、而も独り有司に帰す。夫れ有司(2)上帝室を尊ぶと曰はざるに非ず。下人民を保つと云はざるにあらず。而も政令百端、朝出暮改、政刑情実に成り、賞罰愛憎に出づ。言路壅蔽(3) 、困苦告るなし。
… 臣等愛国の情自ら止む能はず、即ち之を振救するの道を講求するに、唯天下の公議を張る(4)在るのみ、天下の公議を張るは、民撰議院を立つるに在るのみ。則ち有司の権限る所あつて、而して上下安全、其の幸福を受る者あらん。
■注釈
(1)板垣退助、後藤象二郎、副島種臣、江藤新平、由利公正、岡本健三郎、古沢滋、小室信夫の8名を指す。建白書の署名者。 (2)上級官僚のこと。 (3)「言論発表への道が塞がれる」の意。 (4)「公議世論の尊重」のことで、ここでは「士族や豪農豪商の世論を尊重する」の意。
■現代語訳
現在、政権の所在を考えると、皇室や人民にはなく、上級官僚のみにある。政令が非常に多く出され、頻繁に改正されて定まらず、政治や刑罰が私情で行われ、賞罰も好き嫌いで決められている。言論発表の機関がなく、苦しみを告げることもできない。
…私たちは愛国の気持ちを止めることはできず、この状況を救う道を考えてみたが、公議世論を尊重するための民撰議院の設立するほかない。すなわち、上級官僚の権限を制限してこそ皇室・人民共に、幸福を受けることができるのである。