【JH406】五品江戸廻送令
■原典
・続徳川実紀
■史料
神奈川(1)御開港、外国貿易仰せ出され候に付、諸商人共一己之利得に泥(なず)み(2)、競而相場糶上げ(せりあげ)(3)、荷元を買受け、直に御開港場所江相廻し候に付、御府内(4)入津之荷物相減じ、諸色払底(5)に相成、難儀致し候趣相聞こえ候に付、当分之内左之通仰せ出され候。
一、雑穀
一、水油(6)
一、蝋
一、呉服
一、糸
右之品々に限り、貿易荷物之分者、都而(すべて)御府内より相廻し(7)候筈に候間、在在より決而(けっして)神奈川表江(8)積出し申す間敷く候。
■注釈
(1)「横浜」を指す。 (2)「自分の利益だけを考えて」の意。 (3)値段を釣り上げること。 (4)江戸のこと。 (5)「品物不足になる」の意。 (6)菜種油のこと。 (7)江戸経由で出荷すること。 (8)地方の生産物を直接横浜へ送ること。
■現代語訳
神奈川が開港して外国との貿易が始まった。商人らは自分の利益だけを考え、競い合って高い値段で品物を買い取り、神奈川へ直接送り込んでいる。これにより、江戸では品不足が起こり、色々な物が足りなくなって困っていると聞く。しばらくの間、次のように取り行う。
雑穀、水油、蝋、呉服、糸
これらを輸出する場には、全て江戸経由で出荷することとする。生産地から直接神奈川へ移送してはならない。