2021.12.11

【JH116】農民の困窮

■原典

・続日本紀




■史料

(和銅)五年春正月乙酉、詔して(1)曰く、「諸国の役民 郷に還るの日、食糧(2)絶へ乏しくして、多く道路に饉ゑて 溝壑(3)に転填する(4)こと、其の類少なからず。国司等宜しく勤めて撫養(5)を加へ、量りて賑恤す(6)べし。もし死する者有らば、且つ埋葬を加へ、其の姓名を録して、本属に報ぜよ」と。


(和銅六年)三月壬午、…詔したまはく、「諸国の地、江山遐かに阻たって、負担の輩、久しく行役に苦しむ。資粮(7)を具へ備へんとすれば、納貢の恒数(8)を闕き、重負を減損せんとすれば、路に饉うるの少なからざることを恐る」




■注釈

(1)勅とともに天皇の命令を伝える文書のこと。 (2)労役に伴う旅費等の負担は自弁が原則であった。

(3)「道端」の意。 (4)「転がり落ちている」の意。 (5)「憐んで養う」の意。(6)「救済する」の意。

(7)「本籍地」の意。 (8)物資・食料のこと。




■現代語訳(口語訳)

(和銅)5年(712年)正月16日、詔の中で次のように述べられた。「諸国の役民は、労役を終えて郷里に帰る日に、食料が欠乏し、多くが帰路に飢えて道端の溝に転がり落ちてうまっているいったこことが少なくない。国司らはつとめて彼らを憐れんで養い、苦しんでいる状況に応じてものを与えて救うようにせよ。もし死者が出た場合には埋葬するとともに、死者の姓名を記録して本籍地の役所に報告せよ。」

(和銅)6年(713年)3月19日、…同様に次のように述べられた。「諸国の地は河や山によって都から遠く隔てられているので、調・庸などの輸送にあたる人民は、長い間ずっとその負担に苦しんでいる。行旅に必要な物資や食料を十分に用意しようとすれば、納入すべき税の規定数量を数量を欠くことになり、反対に行旅のための重い税を減らせば、旅の途中で飢えることが少ないのではないかと恐れる。」…。




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