【JH112】改新の詔
■原典
・日本書紀
■史料
〔公地公民制〕
(大化)二年春正月甲子朔、賀正礼畢りて、即ち改新の詔を宣ひて曰く、
其の一に曰く、昔在の天皇等の立てたまへる子代の民(1)・処処の屯倉、及び別には、臣・連・伴造・国造・村首(2)の所有る部曲の民(3)・処処の田荘(4)を罷めよ。仍りて食封(5)を大夫(6)より以上に賜ふこと、各差有らむ(7)。降りて布帛を以て官人・百姓に賜ふこと差有らむ。
〔地方行政制度、軍事・交通制度〕
其の二に曰く、初めて京師を修め、畿内・国司(8)・郡司(9)・関塞(10)・斥候(11)・防人(12)・駅馬・伝馬(13)を置き、及び鈴契(14)を造り、山河を定めよ(15)。
〔班田制〕
其の三に曰く、初めて戸籍・計帳(16)・班田収授法を造れ。凡て五十戸を里とし、里毎に長一人を置く。…凡そ田は、長さ卅歩、広さ十二歩を段と為し、十段を町と為よ。段ごとに租稲二束二把、町ごとに租稲廿二束とせよ。
〔税制〕
其の四に曰く、旧の賦役(17)を罷めて、田の調(18)を行へ。…別に戸別の調(19)を収れ。…凡そ采女(20)は、郡の少領(21)より以上の姉妹、及び子女の形容端正し者を貢れ。一百戸を以て、采女一人が粮に充てよ。
■注釈
(1)大王家の直属民のこと。 (2)村の首長のこと。 (3)豪族の私有民のこと。
(4)豪族の私有地のこと。 (5)国家が指定した特定の戸からの租税を、封主に与える制度
(6)国政審議に参与する者のこと。 (7)各々の地位に応じて給付する。 (8)畿内国の司と読む説あり。
(9)郡は大宝律令下での表記。大宝令に従って文字を改められたと考えられる。
(10)軍事上の防御施設のこと。 (11)北方の守備兵と考えられる。 (12)西海の守備兵のこと。
(13)伝馬は各郡家に置かれ、公的な伝達・輸送に用いられた。 (14)駅鈴のこと。
(15)地方の境界を定めること。 (16)庸・調を賦課するための台帳のこと。
(17)従来の租税や力役のこと。
(18)一定基準で田地に賦課する税のこと。 (19)戸を単位として賦課する税のこと。
(20)後宮に仕える女官のこと。 (21)令制では郡司は大領・少領・主政・主帳の四等官からなる。
■現代語訳(口語訳)
(大化)2(646)年正月1日、新年の儀式が終わってから、天皇が改新の詔を宣布された。
第1条にいう。昔の天皇たちが設置した子代や各地の屯倉、及び臣・連・伴造・国造・村首ら諸豪族が支配する部曲や各地の田荘を廃止せよ。これに伴い、大夫以上には食封を、それ以下の役人や庶民には布帛を、それぞれの地位に応じて禄として与えることとする。
第2条にいう。初めて都をつくり、畿内・国司・郡司・及び関塞・斥候・防人・駅馬・伝馬を設置し、駅鈴や木契をつくり、国や郡の境となる山河を定めよ。
第3条にいう。初めて戸籍・計帳・班田収授の法をつくれ。50戸を1里とし、里ごとに里長を置く。田は長さ30歩、広さ12歩を1段とし、10段を1町とせよ。段ごとに稲二束二把、 其の三に曰く、初めて戸籍・計帳(16)・班田収授法を造れ。凡て五十戸を里とし、里毎に長一人を置く。…凡そ田は、長さ卅歩、広さ十二歩を段と為し、十段を町と為よ。段ごとに租稲二束二把、町ごとに租稲二十二束とせよ。
第4条にいう。旧来の税制を廃止して、一定基準による田地への税制を施行せよ。…それとは別に戸を単位とした税を徴収せよ。…采女は郡の少領以上の者の姉妹や子女で容姿端正になるものを貢上せよ。100戸から納入されるものを、采女1人の食料にあてよ。…