【JH108】憲法十七条
■原典
・日本書紀
■史料
(推古天皇十二年)夏四月丙寅朔戊辰、皇太子親ら肇めて憲法十七条を作りたまふ。
一に曰く、和を以て貴と為し、忤ふること無きを宗と為す。人皆党有りて、亦達れる者少し。…
二に曰く、篤く三宝(1)を敬ひ、三宝は仏法僧なり。則ち四生の終帰万の国の極宗なり。何の世、何の人か、是の法を(ば)貴ばざる。…
三に曰く、詔を承りては必ず謹め。君をば則ち天とす。臣をば則ち地とす。…
四に曰く、群卿百寮、礼を以て本とせよ。…
八に曰く、群卿百寮(2)、早く朝り晏く退でよ。…
十二に曰く、国司(3)、国造、百姓に斂ること勿れ。国に二の君なし。民に両の主なし。…
十七に曰く、夫れ事をば、独り断むべからず。必ず衆ともに宜く論ふべし。…
■注釈
(1)仏教のこと。 (2)国政審議に参加する上級豪族のこと。
(3)「国司」の名称は当時未成立のため、国単位での行政支配を担う官吏の存在は不確定。
■現代語訳(口語訳)
推古天皇12(604)年、夏4月3日に皇太子は自らはじめて憲法十七条をつくった。
一に和を貴び、反抗したりすることのないことを基本と心得よ。
二にあつく三宝を敬え。三宝とは仏と仏の教えと僧侶である。仏教はあらゆる生物が最後に帰するところ、万国の究極の拠り所である。どんな世のどんな人がこの教えを貴ばないでいられようか。
三に天皇の詔を受けたならば必ず従え。君とは天、臣とは地のようなものだ。
四に国政をとる者も一般の役人も礼を基本にせよ。
八に官吏は朝早く出勤し、遅く退出せよ。
十二に国司や国造は人民から税を搾り取らないようにせよ。国に二人の君主はなく、民に二人の主人はいない。
十七に物事を独断で行ってはならない。必ず皆と意見を交換するようにせよ。