【JH113】班田収授法と税制〔養老令〕
■原典
・養老令
■史料
①戸籍〔戸令〕
凡そ戸は五十戸を以て里と為よ。里毎に長一人を置け。…
凡そ戸籍(1)は六年に一たび造れ。十一月の上旬より起りて、式に依て勘へ造れ。里別に巻を為せ。…
凡そ戸籍は恒に五比(2)を留めよ。其れ遠き年の者は次に依て除け。近江の大津の宮の庚午の年の籍は、除かず。…
②土地制度〔田令〕
凡そ田は、長さ卅歩、広さ十二歩を段(3)と為よ。十段を町と為よ。段の租稲二束二把。町の租稲廿二束。
凡そ口分田を給はむことは、男に二段。女は三分が一を減ぜよ(4)。五年以下(5)には給はざれ。其の地に寛に狭きことあらば、郷土の法に従れ。易田は倍して給へ。…
凡そ田を賃租せむことは、各一年を限れ。…
凡そ田は、六年に一たび班へ。神田・寺田は、此の限に在らず。若し、身死にたるを以て田を退くべくは、班はむ年に至らむ毎に、即ち収り授ふに従れ。…
凡そ官戸、奴婢の口分田は、良人と同じ。家人、奴婢には、郷の寛に狭きことに随ひて並に三分が一を給へ。
③税制〔賦役令〕
凡そ調の絹・絁・糸・綿・布は、並に郷土の所出に随へよ。…次丁二人、中男四人は、並に正丁一人に准ぜよ。…
凡そ正丁の歳役(6)は十日。若し庸を収るべくは、布二丈六尺。…次丁は二人は一正丁に同じ。中男、及び京、畿内は庸を収るの例に在らず。…
凡そ令条の外の雑徭は、人毎に均く使へ。総て六十日に過ぐることを得ざれ。
凡そ調庸の物は年毎に八月の中旬より起りて輸せ。…其の運脚は均しく庸調の家に出さしめよ。…
■注釈
(1)班田収授と租の課税台帳のこと。(2)6年の5倍である30年の意。
(3)長さ30歩、広さ12歩。360歩で1段となる。
(4)男の3分の2、1段120歩が班支される。
(5)5歳以下は支給されず、6歳以上が支給対象となる。
(6)年10日間状況し労役に従事すること。
■現代語訳(口語訳)
①戸籍〔戸令〕
戸は50戸で一里とし、里ごとに里長をおくこと。戸籍は6年に一度作成する。…(中略)…。戸籍は30年間保存し、近江大津宮の庚午年籍は永久保存とする。
②土地制度〔田令〕
田は長さ30歩、広さ12歩を1段とする。10段を1町とする。1段の租稲は二束二把、1町の租稲は22束。
口分田の支給は男子には2段、女子にはその3分の1を減らして支給すること。5歳以下の者には与えない。…(中略)…。班田は6年に1回行う。6年ごとの班田の年に収授する。…(以下、略)。
③ 税制〔賦役令〕
庸の絹・絁・糸・綿・布は、いずれも土地の特産物で納めること。次丁は2人、中男4人で、正丁1人分とすること。…
正丁の歳役は10日とする。代わりに庸を納める場合は布2丈6尺を納めること。…次丁2人で正丁1人と同じとする。中男、及び京、畿内の者は庸の納入はなしとする。
雑遙は特定の人物に偏らないで均等に課すこと。それは年間で60日を超えないこと。
調庸の納入は8月の中旬より行うこと。…その運脚は庸調の家に均等に負担させること。…